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グローバル資本主義に蹂躙されるこの世界に別の光をあて、別の論理をもちこみ、異郷化する運動への呼びかけとして立ち上がった「鉄犬ヘテロトピア文学賞」第6回受賞作。
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エチオピア北部の都市、ゴンダールーー日本から遥か遠い土地で暮らす人々と著者との関わりは、本を手にする私たちの社会とのズレを突きつけます。この揺さぶられる読書体験は想像することの豊かさを伝えてくれます。
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<選評 / 管 啓次郎>
エチオピアについてわれわれは何を知っているだろう。キリスト教がもっとも古いかたちで残っている国、高原の国。妙に日本の歌謡曲にも似た独特なメロディーのエチオピアン・ジャズが演奏される国。そして民俗学の歴史に少しでも興味のある人なら、たとえば両大戦間フランスのミシェル・レリスが強い興味をもった精霊信仰の国だということも、ただちに思い出せると思う。
今回の「鉄犬へテロトピア文学賞」が選出したのは、まさにレリスの直系ともいうべき、古い街ゴンダールの精霊信仰と音楽文化を研究する、若き映像人類学者のメモワールだ。川瀬慈の人となり、五感の動き、心の揺れのすべてが、飾らないしずかな文体で語られる。もちろんこれは研究書ではないが、濃密な研究のかたわらにある、断片的な記憶の人類学とでもいうべき著作。人類学者の夜の思考。そしてそれは、どんな「学」をも超えて、ただ「文」と呼ぶしかない精神の痕跡に、姿を変えてゆくだろう。
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http://www.sunnyboybooks.jp/the-6th-irondog-heterotopia-iteraryprize/
132mm×182mm / 200p / ソフトカバー